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活動紹介

高薬価構造の改善は急務
2019-06-05
カテゴリ:活動紹介
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 悪性腫瘍の治療法の進歩に伴い、高額薬剤の出現が相次いでいる。現状の価格を放置すれば医療保険財政への悪影響が危惧され、高薬価の是正は急務である。
 
 5月15日の中医協総会において、新薬17品目の薬価収載が認められた。そのひとつがキムリア(CAR―T細胞療法、ノバルティスファーマ)である。
 
キムリアについて
 細胞表面に発現するCD19抗原に対するキメラ抗原受容体(CAR)を、患者から採取したT細胞に遺伝子導入し、培養・輸注するものである。1回の治療で効果は継続するとされている。
 適応疾患は「再発又は難治性のCD 19陽性B細胞急性リンパ芽球性白血病」「再発又は難治性のCD 19陽性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫」で、投与が見込まれる患者数は年間216人、市場規模は72億円を想定している。
 米国での寛解率は良好で、予後不良の疾患に対する新しい治療として期待される一方、サイトカイン放出症候群等の重篤な副作用も報告され、当面の間治療施設は限定される。
 
キムリアの薬価
 米国で5200万円の薬価(成功報酬払い)が設定されていたこともあり、日本での薬価が注目されていたが、3349万円となった。希少疾病用再生医療等製品としての承認区分で、国内初のCAR―T細胞療法による医薬品として原価計算方式で算定され、有効性加算や市場性加算等が上乗せされたと説明している。同時に、費用対効果評価の対象とされた。中医協でもこの高い薬価の妥当性に対する疑問が出されている。
 今後、同様の医薬品が開発・承認された時は、類似薬効比較方式により、先行するキムリアの薬価が踏襲されることになる。
 対象患者数を年間216人と見込んでいることについても違和感がある。
対象2疾患は相当数の患者がいる疾患であり、外国では骨髄腫や大腸がん、神経芽腫などの固形癌への適応拡大も検討されている。
 免疫チェックポイント阻害剤であるオプジーボも、2014年に初めて薬価算定された時は悪性黒色腫の患者470人を想定し、小さな市場規模と開発コストの回収を考慮して高薬価が設定された。当初100 73万円、年間治療費では3000万円を超えるとされた。
 しかし、その後進行・再発性の非小細胞性肺癌をはじめとして効能が拡大し、医療保険財政が破綻するとして高薬価問題がマスメディアを賑わすこととなった。
 
アカデミアでの価格
 こうした高薬価は妥当なのだろうか。
 薬価算定組織は委員の名簿や、委員と製薬会社との利害関係も公式には明らかにされておらず、審議内容は非公開で議事録も作成されない。中医協には審議概要の結果のみが示され、ブラックボックスの中で薬価が決定されている。
 オプジーボも収載時、英国の5倍、米国の2・5倍という、国際的に見ても異常に高い価格が設定された。
 このような高い薬価に対し、大学研究室での開発や国際的な協力による取り組みが行われている。
 国内では名古屋大学小児科と信州大学小児科の共同でCAR―T製剤を開発し、製造費用は100万円以下で可能だったと報告している。また、名古屋大学が北京小児病院に4人の白血病患者の治療を依頼した際のCAR―T療法の費用も100万円だった。もちろん、作成費用を大学研究室と製薬会社で同列に論じることはできないが、昨今の高薬価は特許料、企業買収の高額な費用が薬価に上乗せされていることも指摘されている。
 
狙われる高額薬剤の保険外し
 安全性と有効性が確認された医薬品や医療技術は保険収載されるのが、日本の皆保険制度の大原則の一つである。また、キムリアのような高価格の製剤でも、高額療養費制度により自己負担は41万円程度(年収370〜770万円の場合)となる。
 しかし、財務省は以前より高額医薬品の保険外しを狙っており、4月の財政制度等審議会・財政制度分科会では「費用対効果や財政影響など、経済性の面からの評価も踏まえて、保険収載の可否も含め公的保険での対応の在り方を決める仕組みとしていくべき」と主張した。
 中医協では、費用対効果を用いた薬剤の価格調整が準備されている。そして「評価に見合う価格」までは保険適用とし、価格を上回る部分は全額自己負担として保険から外すことを狙っている。
高額医薬品で医療保険財政は破綻するか
 オプジーボの薬価収載時にも「高額薬剤による財政破綻」が盛んに喧伝されたが、再算定制度の仕組みの改善(2年に1回の適用から、最大年4回へ)により、現在は収載当初の4分の1の価格となり、国民医療費に占める薬剤費の割合に大きな変動は見られていない。現在、再生医療等製品としてキムリア、ジェイス(重症熱傷)、ステミラック(脊髄損傷)、ハートシート(重症心不全)等があり、いずれも確かに高額である。今後、更に増加していくことは明らかだが、新薬の価格設定の是正や再算定制度の一層の改善等で対応することは十分可能である。
 
  ◇ ◇ ◇
 
 原価計算の内訳など、新薬の薬価算定の仕組みの透明化を進めるとともに、費用対効果の名による保険外しを許さない取り組みが求められる。
 
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