活動紹介
外科医療の危機
2025-10-05
カテゴリ:私たちの主張
外科医が減少する中、外科医療を維持していくための人材確保と外科医のモチベーション向上は、喫緊の課題である。骨太の方針2025で「減少傾向にある外科医師の支援等を進める」という画期的な文言が盛り込まれた。
外科医療に関係する人々の各方面での努力が、実を結んだといえよう。例えば日本消化器外科学会では、行政・メディア・国民への働きかけを積極的に行った。国の統計によると、消化器・一般外科(消化器外科)は、唯一医師数が減少している診療科である。医師の総数が増えているにもかかわらず、学会への新入会員が年々減っている。このままでは消化器外科医が、10年後には現在の4分の3に、20年後には半数になる見込みだ。将来、消化器外科医不足のため必要な緊急手術(治療)が受けられない事態になりかねない。
なぜ消化器外科医が減少しているのか。消化器外科の業務内容は、消化器系の癌などに対する予定手術、腸閉塞などに対する緊急手術、抗癌剤などの薬物治療、末期癌患者の緩和ケアなど多岐にわたってきた。
学会が会員対象に行ったアンケート調査では「キャリア形成が見えない」「労働時間に見合う対価がない」などの意見が多かった。タイパ・コスパ・ライフワークバランスを重視する若手に、敬遠される理由であろう。
消化器外科を志願する医学生・研修医は減少し、忙しさに拍車がかかり、ますます志願者が減少する悪循環も起きている。働き方改革による時間外労働上限規制で、さらに厳しい状況を招いている。一方、外科手術に伴う金銭的インセンティブであるサージカルフィーを求める意見もある。
危機感を持つ学会はこれから、専門医のカリキュラム改革、国内留学プロジェクト企画、若手主体のセミナー開催などで新たな人材を発掘するという。
国の正式な書類に「外科医師の支援」と明記したことは評価するが、たとえ政権のトップが交代しても5年10年継続的支援を実行するのか、われわれは注視しなければならない。









