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北海道保険医新聞より
解説
 

民間医療保険の「現物給付」阻止へ
〜これまでの保険法見直し関連の動きについて〜

 法制審議会保険法部会において保険法の見直しが行われ、この機に日米の保険会社は現物給付すなわち医療分野への参入を可能とする改定を狙った。これを阻止すべく保団連は直接法務省に働きかけ、大きな成果を収めた。

保険法とは
 正式には保険法という名の法律は存在せず、明治三十二(一八九九)年に制定された「商法」の第十章『保険』の部分が通称"保険法"と呼ばれ、保険に関する私法上の権利義務関係を規定している。ちなみに「保険業法」は、保険会社に対する規制・監督の在り方を規定するもので、明治三十三(一九〇〇)年に制定され、その後必要に応じて改正が繰り返されており、金融庁が管轄している。

保険法見直し
 法務省は明治三十二年のままの保険法を、形(片仮名・文語体表記から平仮名・口語体表記に)、内容(現代社会に合った適切なルール化)とも見直す必要があるとして、平成十八年九月法務大臣の諮問機関である法制審議会保険法部会を設置した。委員は、法学者および損保会社や生保会社の役員などから構成されている。同年十一月一日第一回の保険法部会開催。以後十四回の会議を経て中間試案が策定された。

中間試案
 平成十九年八月十四日「保険法の見直しに関する中間試案」が公表され、同時にパブリックコメントが募集された。試案の中で「生命保険契約の意義」という項が問題の一文である。「生命保険契約は、当事者の一方が相手方又は第三者の生存又は死亡に関して一定額の金銭の支払〔その他の一定の給付〕をすることを約し、相手方がこれに対して保険料を支払うことを約することによって、その効力を生ずるものとする。」注記があり、「『その他の一定の給付』は、労務や役務(サービス等)の提供等の金銭の支払以外の方法による定額の給付である。このような規律とすることの当否や他の規律との関係については、なお検討する必要があるため、〔 〕を付している。」

パブリックコメント
 九月十三日、神奈川県保険医協会がパブリックコメントを提出した。中間試案が立法化された場合、健康保険の根幹「療養の給付」が崩され、米国型医療を招来する危険性が高く、撤回を強く求めるという趣旨である。審議会の委員に、混合診療解禁や営利企業の医療機関経営解禁の動きに連なるメンバーが加わっていることにも言及している。
九月十四日保団連は、現物給付を民間保険に解禁することは公的医療保険の給付抑制を一層強め医療崩壊を加速させるものであり、改定の実施中止を強く求める趣旨のコメントを提出した。また九月二十六日には法務大臣と厚生労働大臣に「中間試案」に基づく保険法改定の実施中止を求める要請を行った。

法務省と保団連の懇談
 法務省側からの申し入れにより、十月十八日法務省の萩本修大臣官房参事官と保団連の津田・馬場両副会長とで懇談が行われた。法務省側は「〔その他の一定の給付〕というのは、定額の支払だけでなく支払額相当の費用、例えば葬儀や老人ホーム入居権などの提供の可能性を検討しているもので、サービスとしての医療給付や介護給付は想定していない」と説明した。保団連側は、健保法や介護保険法で規定している「現物給付」の解禁は行わないことを明確にすることを要求し、想定していないことの明示を保険法部会で検討したい、との回答を得た。

成果と今後
 元々、現物給付を盛り込みたい保険会社側の委員と、金銭の支払以外の給付に反対する法学者の委員との間で意見の統一ができず、中間試案では「その他の一定の給付」に〔 〕や注記が付されていた。また法務省としては、厚生労働省など他省庁との調整や審議などは避けたいという思惑がある。そこに保団連などの運動が後押しして、十一月十四日の第十九回保険法部会で、「療養の給付(医療や治療)については、上記の給付の対象とはしない」という注記が追加された。
 その後も意見が分かれたまま議論が続いたが、今年一月十六日の第二十四回保険法部会でまとめられた要綱案で、「生命保険契約の意義」の一文は「・・・一定の金銭の支払をすることを約し・・・」と規定され、中間試案にあった〔その他の一定の給付〕は遂に削除されることになった。
 ただし保険法改定の要綱は二月中旬の法制審議会総会で最終決定するものであり、その後国会に提出されることになる。保険会社などからの内圧や、在日米国商工会議所などからの外圧がかかっているのが実状であり、今後も厳しく見守る必要がある。


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